梅雨晴間/月形半分子
長雨が続いたあと、街は三日ほど好天に恵まれた。一昔前のように、誰かの車のエンジンが雨にやられたという話もないものだから、修理屋の親父は手持ちのポンコツのラジオをつけては、そのヘタレたスピーカーの音に満足するよりする事がない。
修理屋の息子はポケットの小銭を頼りに南へと歩き出す。少し先にある隣町のその先にある海へと向かって。アスファルトの道を大型トラックがときおり通り過ぎる。高く飛びすぎた鳥たちが、塵のように空を飛んで行く。 もう誰もが一昔前とは違う。その証拠に、もう誰もバッテリーの心配などしていない。心配しなくていい訳を、いったい誰が誰に教えたというのだろう。
長雨が続いた後、三日
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