猫はサワン/MOJO
私に向けていたから。魚ごときに言い負かされそうになった私は、だんだん腹が立ってきた。私はその魚を小舟の上に引っぱりあげ、びくびく動くえらぶたあたりをがっちり押さえこみ、包丁でカレーをつくるときの玉ねぎのように、細かく切り刻み、海面にばら撒いてしまった。すると、きらきらひかっていた海面は、灰褐色に濁り始め、どこからか終末感を起想させる音楽が響き始めた。荘厳、といってよい調べに暫らく身をゆだね、私は小舟の上でじっと動かずにいる。
つまり、私はふてくされていたのである。
給料の良いホワイトカラーから脱落し、抗うつ薬を飲みながら、安月給でコロッケを揚げる、サービス残業が当たり前の総菜屋店員に成
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