草案と次の草案と詩と幸せ/ヨルノテガム
 



 虹という虫が
 階段の登り下りをして
 小さい花や小さい花を咲かし揺らす風の足音
 少しの涙や水面に映す幻影を

 髪を撫でる青い空や
 うつ向いた月と話す今日の
 誰かと誰かは
 少しの涙と少しの幸せを入れ替える
 優しく気まぐれな極端なあれこれ

 汗をかいた鼻に触れる
 花首を折った少年の死のような匂い
 不確かな老婆の妊娠、と想い出
 目を閉じた少女の人形、眠る花束
 海を渡った男の靴と鞄とただの動物の皮
 歩く虫、歩く虫の抜け殻、歩く虫の飛び立った跡、
 虹という

 果実が毎年、魔法のように生まれ落ち
 転がる過ぎゆく、私とい
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