気づく/殿岡秀秋
公園の散歩道で
不意に
蝉の合唱に包まれる
ぼんやり
考えていて
身体にバリアーができて
今まで蝉たちの声を遮っていたのか
木々を見上げる
どの枝で鳴いているのか
蝉は見つからない
幼い日も
とりもちを竿の先につけて
蝉の鳴く木を見上げたが
見つけられかった
小さな挫折
それから何度も
挫折を
繰り返してきた
もういいんだよ
と人ではないだれかが
ささやいてくれるのを
歩きながら
待っているのか
道に蝉が死んでいる
蟻が群がっているが
無事に子孫へ
いのちを繋げただろうか
ただそのために
飛び
鳴く存在になったのだから
ぼくは鳴いただろうか
その声は空に
届いただろうか
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