よいちとだいだらぼっち/……とある蛙
どこのこだれのこ
おしえとくれ
やまからさとへつれてくわ
ひびきわたる大音声
子供はきょとんと泣き止んだ
だいだらぼっちのひげづらに
こわがるそぶりもみせなんだ
だいだらぼっちはよいちをつまみ
やまのようなかたにのせ
そのまま山からくだっていった。
とちゅうの山道に村人が
よいちを探してたいまつで
よいち〜
よいち〜
と呼ばわった
よいち〜よいち〜
ッと声を涸らす
だいだらぼっちは村人に
気づかれぬようにそっと
よいちをじめんにおろす
よいちをそっと山道の
みちのはずれの道祖神
その脇によいちをそっとおろす
もう泣くんじゃないぞ
もうはぐれんじゃないぞ
とてもやさしくこういった
よいちは頷き
よいちはてをふる
だいだらぼっちも手を振って
そのまま山に消えていった。
村人ひとりも気づかぬうちに
だいだらぼっちはそのうちきえた
二度と山にも現れなんだ
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