六月の埋葬/もっぷ
インク花の囁きのさやかなるここは
六月の雨の庭
アジサイの清楚に花盗人の恋をする
いのちの謳歌の聴こえる
ほら、あちらではカエルも
カタツムリもそれぞれに
恋をしている
乙女もわざと傘を忘れ
濡れそぼるを選びながら時計を
気にしている
一本の傘を持った愛しい人が現われ
連れ去ってくれる真昼の夢を見ながら
いまこそ繁盛する傘屋の歓び
さて、稼ぎ時と
戸を開けて雨の止まないことを祈って終わらない刹那の信心
カフェのテラス席が閑古鳥で
空を恨めしげに見やっている
恋と恋未満と来たる海での浮き輪をねだる子らに
立ち去られて
都合よくスケッチされる雨の季節の真実は
かなしみ
終焉を待たれる残酷の渦中
背後にはカレンダーの夏が
ビーチパラソルの花を咲かせて
迫っている
乙女も一つの傘を携える彼の人と約束の五分後に巡り会い
もっとちいさないのちたちもそれぞれに恋を成就させ
思惑という思惑が実りつくしたころに
六月は埋葬される
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