朝焼け売り/智鶴
 
水に映る夜はきっと
誰が見ても美しいものなのに、と
君は諦めたように溜息を吐いた
そうだね、と僕は顔を上げて
もうすぐ生まれ変わる街を
薄らぎの色に塗り替える

雨に濡れた街は絵具の様
灰色の雲の下、灰色の屋根が並んで
それを溶かして空に筆を走らせる
蒼が欲しいね
ぽつりと呟いた君の横顔に
ぽつりと蒼色の雨が落ちた

街が泣き出してしまったから
君は堅い色のカーテンを閉ざしてしまう
六月はずっと
街が泣いているみたいなの、灰色で
全てが古くなってしまったみたいに
珍しく口を開いた君はまだ、「    」 
そうだね
でもね
溶かした空に滲みだした朱色が

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