扉/草野大悟2
けてやりたい。叶わないものを叶えることが、私たちの仕事だ。
扉の軋む音が大きくなった。恐竜の声。のたうっている。扉が、開けられることを拒んでいる。拒まれるようなことをしてはいない。
これから先私たちが存在する限り、そんなことは、決してしない。断言する。
もう、どれくらい長い間、歩いてきただろう。分からない。ここには、時間などという煩わしい概念はない。しかし、体が、ずいぶん歩いた。一生分歩いた。そう、悲鳴を上げているのが分かる。
頑張れ、青が叫んだ。
みんなの顔がぱっと輝いた。
頑張れ、もう一度、青が叫んだ。
叫び声の真ん前に扉があった。足が歩くことを辞めた。もう、歩かない。そう決めていた。雨? いいや、秋空は澄みわたっている。
涙? まさか。
「みんな、扉を開けるよ」
「うん」
「いち、に、の、さんっ!」
赤と青と緑が一緒になった。光があふれた。
ブランが飛び跳ねている。
黄と赤紫と空色も一緒になった。光に包まれて満面の笑みを浮かべたノワールがいた。
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