国境の橋/藤原絵理子
 

国境に近い南の町に続く
砂埃だらけの道を
重い荷物を担った
若い兵士たちが行く

きみのしあわせは
ほんとうにそんなところにあるの?

きみが持っているはずの
すばらしい力や瞳の輝きが
膨張を続けるための競争や
膨張と膨張がぶつかり合う場所で起こる戦いに
注ぎ込まれて失われていくのを
きみは 哀しみも感傷もなく
それが自然であるかのように
きみ自身の思いであるかのように
淡々と語るんだね

そこへ行っても
暖かく包んでくれるものはないよ
寒い砂漠の夜のまっただなかで
自分が流した血の暖かさに気付いたとき
きっと きみの いのちの灯は
消えかかっているんだ

生まれたままのきみが
こわがったり
よろこんだり
怖気づいたり
勇気をだしたり
そうやって生きていくことを
生き物として生きていくことを
どんな神様も
いとおしいと思わないはずがないのに

だけど
南の町に着いたとき
国境にかかる長い橋を
きっと きみは
渡ろうとはしないんだ


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