屋上スタイル/千月 話子
連立する高層住宅の緑は孤独
メタリックな金魚は
雨の日に口を開けて上昇するんだ
施錠された鍵は傷ついている
何度も何度も何度も
屋上に取り付けられたばかりに
また傷ついている
無機質を装って
目の前で空気というものは
一体どれだけあるというのだろう
朦朧とする意識が無臭を探す
解けたチェーンは
数回ほど引っ張られていた
ご親切な何かよ
取り敢えず「ありがとう」
と 瞼を伏せて
受け入れた景色が体の周りを
ぐるぐると取り囲むのを感じていたんだ
腕は鳥のように広げないでおこう
風が巻き取った重力で
コンクリート 屋上 床
世界
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