栞/小川 葉
 

心配になり
妻にその古本の話をした
妻は黙って
銀行のキャッシュカードを
私に渡し
それっきりだった

栞の口座番号をよく見ると
それは私の口座だったのである
この詩集を売ったのは
妻だった

そういえばこの詩集
見おぼえがある

むかし本屋で買った詩集を
私はふたたび
古本屋で
買ってしまったようである

私は三年前の今頃を思い出す
家族を支えていた
妻の詩を
真実の生活の詩を
読んだ気がした

帰ってきたこの詩集

その詩集に
妻が栞を挟んでから
もう三年になる


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