栞/小川 葉
 


古本屋で買ってきた
詩集の頁に
銀行の明細書が挟まっていた

お取引金額二千円
手数料百五円
お取引後残高十六円

そう記された明細書が
栞のように
詩集に挟まっていた

取扱日は平成二十三年六月
もう三年になる

銀行で
二千円おろした後
足りなくて
この詩集を売ったのだろう

あれから三年
この詩集を売った人は
今も生きているのかと
不安が脳裏をよぎる

栞のある頁には
「米を研ぐ」
という一編の詩

そのタイトルにより
ここに挟んだのは
無言の救いを求める
メッセージのような気にもなってきて
切なくなった


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