樹晶夜 【横書Ver.】*改訂版/ハァモニィベル
 
足跡を捨てながら
帰り途を急ぐ
 その歩数と
  掛け算するように
夜の密度が
 濃くなっていく

粘度を増して
重く絡みつきはじめた
暗闇の
後ろ姿しか
見えない

姿の無い
透き通った戦慄が
肌を
摺り抜ける
 その度に、
殺意のような汗が、
背中で
微笑む

 憂鬱を
  笑うような速度で
 這うように
 微笑む

 *

やがて、
樹状に
どこまでも
分岐しながら・・・

もう
帰れない、と
知った

何時(なんじ)でもない世界に

デジタル時計のような高層ビルが
起立する
 一瞬の
この場所で


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