樹晶夜 【縦書Ver.】/ハァモニィベル
足跡を捨てながら
帰り途を急ぐ
その歩数と
掛け算するように
夜の密度が
濃くなっていく
粘度を増して
重く絡みつきはじめた
暗闇の
後ろ姿だけしか
もう見えない
姿の見えない
透き通った戦慄が
肌を
摺り抜けるたび
殺意のような汗が
背中で
微笑む
まるで憂鬱を
笑うような速度で
それは
這う
やがて、
樹状にどこまでも分岐しながら・・・
もう
帰れない、と
知った
何時でもない 世界に
デジタル時計のようなビルが建ち並ぶ
一瞬の
この場所で
廻る世界に溶け込む痛み
マンデヴィルの
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