人へ/葉leaf
〈雨天から降ってくる雨という憂鬱〉
世界が世界一つ分狭まると雨が人々の庭に侵入してくる。
人は歩けない以上に歌が歌えない。
声は口に達する前に雨によって沈められてしまう。
電車が遠くを走っている。
新聞配達が新聞を配る。
何でもない自由な出来事が、全て儀式の固さをまとってしまうのが雨天の日だ
〈偽ることでつながる〉
本物の愛も憎しみも友情もない場所で僕はやっと人の輪の中にするりと入れた。
互いに仮面をかぶり事務と論理が支配する場所でやっと僕はメンバーとして認められた。
心からの笑い合いや本音と情実の場から弾き出された僕が効率性を生み出す偽りによって初めて社会的な愛に包まれた
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