Mirage/ハァモニィベル
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レトリックの瓦礫が密集する街を頬を赤らめて通り過ぎてゆく足取りが虚しい
整然さを嫌った歪んだ街路ばかりの、あざとく惑わすような模造芸術の佇まい
支配電波が強烈な悪名高いB地区では入力辞書の変換も大してあてにならない
正統が異端となる街。俺は途を急いだ。ここには……音がない
その街の隅に、独りの男がいて、俺は彼に遭いたくていま、この途を歩いているのだ
踏み込めば、すぐに出たくなるような道ばかりを、蒼醒めつつ掻き分けながら進んだ
辿り着いた時にはひと足遅く、そこに目的の男の姿はなく、街を捨て旅立った後だった
俺は仕方なくこの地区を出て男の後を追い旅に出た
空が白くな
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