イノシシ/イナエ
 
初秋の晴れた朝
人間の作った柵を乗り越え
甘藷の群生する土地に入って
甘味な芋を掘り出し 食っていた

と…
大きな人間が木の杖を構えて
殴りかかってくる
逃げる間などありはしない

 朝飯の最中に襲われて
 黙って引き下がる獣はいない
 人に飼われた犬ですら
 飯の最中に皿を引かれたら
 引いたやつの手に噛みつくではないか
 猫ですら捕ったネズミを奪われそうになれば
 歯を食いしばり怒りの唸りを上げて爪を立てる 
 ではないか
 
 ましてや野生に生きる猪
 此処がニンゲンエリアの裏庭だとしても
 この機会を逃しては
 次に餌にありつけるのは何時か

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