追憶の向こう側/ウデラコウ
 
過ぎ去った過去を 懐かしく思う暇もなく
夜風がただ 
冷たい頃が 好きだった

今はもう
空は夏を覚え始めたというのに

今宵の風は
あの時のように
肌を優しく刺して

僕の 弱いところだけ 剥き出しにする

こうして
世界から 抜け落ちて
君がいた あの頃まで
戻れるのなら

今も そこで 君が

あの日のまま

笑っているのなら

この風が 止む前に
いっそ 幕を下ろしてみようかと 思うけど

君がふれた
この右手にはまだ

君の感触が 鮮やかに残りすぎていて

僕は
君という幻に 取り残されたまま

こんな時にだけ
ひど
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