TOKYO/砦希
 
寝苦しい
東京の夜
ビルの明かりと
かなしい下水の川の唸り

すべての睡眠を放棄して
月を見上げにベランダに出たけれど
今はたてものの壁に隠れ
なにも見えない時間だった


くちびるが
荒れている

何度もくりかえし
なにかを叫ぶのは
もうやめにした
届かない切なさに
こころを痛めるのも

それがこの街での
正しいやり方だと
みんなが身をもって
教えてくれた

くちびるが
荒れている

むりやり誰かを信じなくても
むりやり微笑みかけなくても
なにかを手に入れるために
からだの一部を失わなくても
ここでは生きていける


眠りから見放された
東京の夜
曇りガラスに映ったのは
ビルの明かりと
月のひかり
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