金曜日/itukamitaniji
金曜日
バスを降りた途端 夜の町に穏やかな風が吹いて
夏の匂いがするねと 隣の君に僕はそう言った
長いこと僕らの町にあった 小さなスーパーは
ついにつぶされて 無意味にアパートが建つってさ
最近のどの調子が悪いから 最後の買い物に
ハチミツを買いに行くんだと 君は咳をした
まるで土曜日みたいな日だなって
わけわかんないこと言って
いつもの十字路で 「また明日」と言葉を掛け合って別れる
違う向きに同じ色の空を見上げ 離れていく背中が二つ
大きな祭りがもうすぐあって 浴衣を着て出かけたいと
でも休みがないからなって 君は渋い顔をしている
浴衣の君はさぞ
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