しおくみざか/れつら
街に、
生きられなくなったばらばらのわたしたちの部分は、
あんまりにも集まれずに、
けれど庭にわの花、時どきの花、ところにより、雪、
――あなたの自由はそれだけ、そう、ない。まったくない!
(E.イェリネク『光のない。(プロローグ?)』)
たったひとつの街で、
たとえば――横浜に汐汲坂という坂があり、蕎麦屋があり、ネイルサロンがあり、中華を出す店があり、歩くほどに勾配はきつくなり、わっせ、わっせ、歩いて、山手通りを西へ、女子校があり、女子校の反対側には女子校があり、街には外国人が入ってきて、高台に乗って、海を見て、液状の記憶を埋め立てて、雲にのって、福島の風が、届くま
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