ある女/すみれこ
誰かが町の外れで泣いている
お城を逃げ出した使用人が泣いている
王子に愛された女が泣いている
王子は女に逃げようといった
空しい未来の王座から
ふたりの結ばれない未来から
女はその晩、城を逃げ出した
女は走った走った
王子の温もりが優しさがその肌から消えるようにと走った
なにもかも失った女は橋の上で考える
わたしはどうして逃げたのかしら
愛していたからか、それともいなかったからか
女は一刻もそうしていたが、頬を拭うと橋の元の川へ身を投げた
彼女を殺したのは誰でしょう
愛でしょうか 運命でしょうか お城でしょうか 王子でしょうか
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