つばさがあったころ/砦希
つばさがあったころ
言葉を捨てるまえのおはなし
がりがりの背中に
綺麗とは言えないけれど
一対のつばさが生えていて
鉄塔に上り
飛べるかためしてみた
つばさは意思とは関係なくはばたき
わたしは空を飛んだ
羽根は少しずつ舞い散り
けれど少しも怖くなかった
雲を突き破り
太陽にあたためられ
鳥たちと微笑み合った
わたしは飛んでいる!
こんなにも高く
こんなにも自由に
気がつくと
わたしは鉄塔の下に横たわり
鳥たちの飛ぶのを見ていた
太陽は遠く
けれどとても幸せだった
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