レマン湖にて/吉岡ペペロ
山間の駅から
緑のパノラマをぬけてモントルーに向かう
ずっとハイジの風景が続いている
そこには少女や少年はいなかった
岩がせりあがったようなアルプスの山々
急峻な斜面にたんぼは無理なんだろう
草しか生やせないのだろう
草を食む山羊たち
さすが山の羊と書くだけあって
草の斜面を滑り落ちる気配はなかった
アルプスの急峻な草の斜面には
ハイジもペーター、ましてやクララなどいなかった
そこで暮らすひとたちの故郷を
ただただ見つめていただけだった
ぼくらはそこになにをみとめているのだろう
あったかも知れないべつの人生だろうか
ハイジを観ていた昭和のころの思い出だろうか
レマン湖をのぞむホテルに着いた
明日はネスレの本社にゆく
ブランドの成り立ちを探しにゆく
ブランドとは高付加価値のことではない
他者がみとめた価値、それがブランドだ
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