雉のたまご/chiharu
わたしが子どもの頃、
庭で番いの雉を飼っていた。
決して広くはない鳥小屋で
父は黙々と世話をしていた。
鋭い眼光と美しい羽。
「綺麗だろう?」と父は言った。
雉は時々、たまごを産んだ。
父はそのたまごをご飯にかけて食べていた。
わたしはなんだか気持ちが悪くて
一度も食べたことはなかった。
ある日、学校から帰ると雄の雉がいない。
逃げたのか?
そう思って父に尋ねると、
「あぁ、もう雉はいない。
さっき首を絞めて殺したのさ。」
なんで?
あんなに世話をしていたじゃないか。
たまごを産んでくれたじゃないか。
どうして殺したのか。
暫くして雉は剥製となって家に戻ってきた。
美しいものを永遠に傍に置いておきたい
父の征服欲。
吐き気がした。
雌の雉は、後を追うように死んだ。
もう、その雉の剥製は家にはない。
父が捨ててしまったらしい。
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