弁当/山部 佳
煮た竹輪と梅干
飯には煮汁が染み込んで
みっともない模様を描いていた
蓋で隠しながら
弁当を食った
級友に見られるのが
たまらなく恥ずかしかった
日曜日も休むことなく
ミシンを踏んでいる背中に
私の不満は飲み込まれた
「教科書が増えて重いんや」
こじつけた言い訳に、母は
「ああ、そうかい」
背中越しにあっさりと答えた
高2の春から
私は母の弁当を食っていない
そして、それはもう永遠に食えない
梅雨の走り
命日が近づくと
あの弁当が食ってみたくなる
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