林檎の花の咲く前に/砂木
言いながらも
やりきれない私達は切り捨てながら進むしかない
苦楽を共にしてきた母だからこそした決断
みずから雪が折るように枝の支柱をはずした母
父の林檎は 母の林檎 ごめん母さん
兼業農家を続けて行くしか 今 選択の余地はない
よく桃ちゃんを切らなかったなあ と母に言う
俺だって人だ と 弟が母に言ったらしい
かろうじて生き残る範囲にいたらしい
根だけにされた林檎の木が いくつかの山盛りになっている
数年かけて 腐らせるのか 燃やすのか
人が倒れないように 倒された林檎の木々
降り止まない雪を黙々と払い 父が守った林檎の木々
だども父さん なんぼがだば ずっとのごるべおの
気休めでしかないけれども 今ある力はこれだけだ
じいちゃん ばあちゃん とうさん
桃の花が とても綺麗だ
蜂は 何も知らない
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