めぐる/森川美咲
春の妖精の悪戯で
声をなくしたウグイスは
春を唄えなくて
どうしただろう
きっと風は彼にも
春を知らせてやっただろう
その喜びを唄えなくて
ウグイスは苦しんだのか
ただ春の風を全身に纏って
心は唄い、踊っていたのか
夏の魔女の気まぐれで
光を奪われた蛍は
夏を輝けなくて
どうしただろう
きっとせせらぎは彼にも
夏の薫りを届けただろう
その薫りの中で輝けなくて
蛍は悲しんだのか
ただせせらぎと薫りに抱かれて
心は輝き、舞っていたのか
愛しい人が去って
言葉を無くした僕は
これからくる秋を
どうして迎えよう
きっと僕には追憶が
秋を連れてくるのだろう
そんな切なさを詩にも綴れず
僕は涙するのだろうか
ただ面影を抱きしめて
心穏やかに過ごすのだろうか
そして冬
悪戯も気まぐれも消えて
真実だけが残る冬
春にはすべての答えが
はっきりするだろう
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