胸にチクリ/
殿岡秀秋
ぼくから離れただけだが
母と離れることが
ありうることに
おどろいて
泣いた
その日から
独りで生きるのを
承諾しないぼくが
指しゃぶりしながら
胸の搭に眠っていた
見つめあう
街路のぼくと
小窓からのぞく
もうひとりのぼく
今街路に立つぼくに
独りで生きていこうよ
と胸の搭の小窓から
ぼくが呼びかける
一瞬うなずいて
夕暮れの街路に
溶けていくぼく
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