手向け 最愛を受けた者より/黒ヱ
も忘れた
「さよなら」
二度とは会えぬと 語りかけてきた狐の
後ろで 温もりなく手を振る 貴方によく似た人
「ねぇ おじいちゃん」
わたしは こんなに大きくなったよ
いろんなことを 出来るようになったよ
今やっと 全部に気づいて 叫んでいるよ
会いたいんだよ どこにいるの
こんな遠いところで 叫んでいる
撫でられることのない 迷い子は
あの日の貴方に会いたがってる
貴方は知る由もないのでしょう
そう それでも
最愛の果て 気付けたわたしは会いに行くのに
貴方がいないとしても
思い出の園に とても好きな小さな香りがある
わたしに向かって 大きな手を広げて
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