血管少女/るるりら
 
絵の具の声が
はじめて油絵具を手にした少女には 聞こえた。
「恥じるな ためらうな チューブから色を ひねりだせ」
開封し、すこしだけ色を出してはみるけれど、ぬっちょりとした色があるだけの
それはまるで スライムのよう
人工ゴム粘液と違うのは、 みるみる乾くものだから、おもうままに描けない。
苛立ちのせいで 赤い絵の具を たいして使いもせずケースに収めた。

少女の特技は おもいのままの夢をみることができること
布団に入ると
あかいあかい動脈の血を 心に描きながら瞼を閉じた。
赤い世界が 眼前に広がる
少女は心臓に行ってみた。
無垢に鼓動し 身体のすみずみを 突き進む

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