死に場所/山部 佳
死ぬ場所をどうするか
出稼ぎ組の私にとっては重大な問題である
私は、どこで死ぬのか…
高度に進んだ医学界では
見つけた患者をベッドの上以外で
死なせるようなことは許されない
秋に、老いた桜の大木が折れた
ビルの隙間の忘れられた地面に佇立して
春のたびに見事な花を咲かせ
その時だけは、衆目を集めた
その桜が
ビルの谷間を走り抜ける風に
身を任せて倒れた
桜が倒れかかったマンションから
住人の苦情に従って管理組合から申し入れがあった
倒れた桜は
間髪入れずやってきた造園屋の
非情なチェーンソーでばらばらに解体され
市の清掃工場に運び去られた
彼女は既に
二酸化炭素と水と少々の酸化マグネシウムになって
再びこの世界を構成しているだろう
最新の医療分析機器は
どんな些細な揺らぎも見逃さず
その度に医学者たちは
新しい病名をつけるのに四苦八苦する
自然に去っていくことが許されない
神から離れた結末が
とてつもない正義に成長する
私の死に場所は…
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