初めての夏/竜門勇気
 

とうきびと甘藍を甘味の極と思いながら
私はラジオを聞く

癖のある言葉ではあったが
それは今思えば文語の終わりでもあったかもしれない
そこに意味をなくした文語が
断末魔を告げた 夏の暑い日だった

父は最大の潜水艦で
臑の肉を根こそぎ刮げ取られて
終戦前年にラバウルで
東條英機が向かうはずの場所で
息絶えたと聞いた

とうきびと甘藍
甘味は国土では共通語だった
それのみならず
根葉問わず「甘い」ということは
盗みと闇市での強さだった
やがてGHQとの摩擦がまんじゅうや
かの名高いハーシーを生み出すまでは

父の臑は私にとって誇りであった
小学校では
[次のページ]
戻る   Point(2)