無謀/オダ カズヒコ
 


海岸道路わきに車を停め
赤い傘を立て
女の肩を抱き
突堤を海へと向かって歩く

鉛色の空が
どこまでも低く垂れこめる

雨があがった一瞬
俺たちはそこできつく抱き合って
キスをした
手放した赤い傘は
海があっという間に飲み込んでいった

海の水は
まだあの頃のように
冷たいんだろうか?

まるで死体がいっぱい埋まっている
デコボコの土くれのようだ
唇の中で
考えている
ずっと先の
これからことだ

女の体を離すと
彼女の目をじっと見つめて言った

そう
昔のようにそれを義務としてではなく
使命のように感じている
もっと控えめに言
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