焼きたてのパンに降りかかる悲劇/オダ カズヒコ
声をあげるべきだろうと思った
今朝はまるで空襲の後の
焼け跡の空に似ている
明るみに出ている
ニンゲンの論理
プラットホームに発着する
列車と時刻表と
疲れきった満員電車の
横揺れの鈍い動き
示し合わせたかのような
無関心が隣り合う
つり革の腕
一頭のヒグマが
JR学研都市線
星田駅で乗り込んできた
190センチ
200キロくらいはあるだろう
躯体を折り曲げ
面倒そうに隙間を開ける
女子高生とOL風の女の隙間に入った
彼の卑しいお腹の肉が
女子高生の顔の当りに来ている
クマはポケットから赤旗を取り出し読み始めた
しきりにハン
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