心はいえない/オダ カズヒコ
 


蛙の鳴き声を聴くのが好きさ
ぼくの家の緑に囲まれた
窓からも
そいつらの逞しい声が
よく聴こえる

近所の公民館の植栽を
しっとりと彩る
ツツジの花や葉っぱも
田んぼについたジグザグの
トラクターの車輪や
キャタピラの痕跡も

蛙の鳴き声が
きっと染み付いている

そういえば
転校生だった
18年前の夏
ぼくはこの町に越してきた

夏休み
学校の廊下を
母親と歩いた

職員室の扉を開くと
おばさんが居た
担任の先生だった

どんな挨拶をしたのか
どんな顔をして
頭を下げたのか
今はもう
思い出すことはできない

空っぽの
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