「詩集」/ハァモニィベル
 
彼女は毎日散歩することにしていた。
おもいがけなく、風の強く吹いたその日、坂道を登り切ったところで
風に語りかけられた樹のように
彼女はざわめいた
そこで傷ついて死んだ小鳥の姿を
見られてしまったからという理由以上に

なにか落としましたよ。
これです。小さな詩集です。
貴女の詩集ですよ。

え、?
何ですか、それ?
どうして、見えるの? どうして、在るの?
『わたしの書いた詩集』・・・、が・・・。

すみません、誰にも見せない詩集でしたね
そっと大切にしまっておいて
そっと密かに見かえすような
皆んな 誰もが持っている。だけど、あなただけが持っている


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