ふね/藤原絵理子
 

あたしは舟を漕ぐ
薄紅色にぼんやり光る水
空には忘れ物をしてきた月


待ち続けていると
ガラス窓に張り付いた
ヤモリの手までかわいく見える


むかしの歌は
遠ざかり行く駅の
プラットフォームに溢れた
懐かしい人たちの笑顔


少しだけ綺麗になった
賢しら顔からメガネを取って
きみに恋した昨日から
流されていく 忘れ去っていく

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