不立文字/
ichirou
座禅
靴下を裏返すように
自分の端をつまみ
引っ張ってひっくり返すと
私は
闇に包まれ
遮音され
触覚も
痛覚も
温点と冷点もなく
声を出すことも
食べることも
匂いを嗅ぐことも
できなくなった
すべての感覚器官が内に閉ざされ
非我を知る術を
非我に伝える術を
失った
残るはこの意識
でもやはり
生きる愛おしさが残り
無に帰して無我に
なれず
あの時
あの空
あの人
の
何かを想い
感じていた
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