Amekuri/Debby
。彼は繰り合わせた、僕は繰り合わせられなかった、それだけのことだ。
父が降り始めた。途方もなく強い雨だった、なにもかもが押し流されてしまうような気がしたが、目が覚めても町はそこにあった。いつもの朝だった。父は止んでいた。
雨繰りは色んなものが好きだ。自転車が好きだしお酒も好きだ、始めるお金はないけど鉄道模型だって好きだし、アクアリウムだって好きだ。人だってそうだ。どんな人も、大体は嫌いじゃない。問題は大体の人が雨繰りを嫌うことだ。でも、それもまた仕方がない。だって、僕は繰り合わせられないのだから。
自分のために雨を降らせる人間には何も残らない。そんな風に父は言っていた。では、父
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