一つの空席のために二つの椅子を用意して/末下りょう
向かい合わされた二つの椅子の一つに座る
誰かの温もりがまだ残された椅子に
浅く、前屈みに
向かい合わされたもう一つの椅子に
客人が座る
深く、めざめに
もたれ
客人の手の甲には何かが書かれているが
ここからは
読めない
積み重ねた接続詞のちりに息が詰まり
咳をする、約束を忘れた
約束のような
顔をして
すべての午後の相槌が客人に加担した午前になれば
ぼくは席を外す
一つの空席のために
言葉をまえに
ぼくらはなぜか、はしゃぐから
戻る 編 削 Point(5)