私の顔/ichirou
私の顔は古い写真のようだ
いや
私の顔は古い
このアパートに来たときにトイレの棚に置いた手鏡は
ほこりまみれで
何の役目があったのやら
ほこりまみれであること以外
何も特徴のない手鏡は
魔鏡のようにもならず
ただトイレの天井を照らしていた
手鏡が
光を探しながら顔を映すものだとしたら
私はこの1年間
顔を見るための光を探していたのか
ほこりまみれにしたのは
自分を曖昧にしたかったからか
いま
手鏡に映っているのは
他人ではない自分の顔
ただ古くなっている自分の顔
そうに違いない
どうやら私は自分とは初対面ではないらしい
何度目か忘れてしまったが
いま私は自分という私に会う
戻る 編 削 Point(12)