峯澤典子詩集『ひかりの途上で』について/葉leaf
 
の詩の倫理はあるのではないだろうか。
 峯澤の作品は、豊かで温かく包み込んでくるような生活環境を描き、それらの環境が読者に情緒的・知性的・意志的に働きかけてくるという意味で抒情性に満ちている。それだけではなく、作品はまず彼女にとって多様で個別的な意味を持ち、彼女にとってこそ一番抒情的であった。さらに、作品に描かれる彼女のたたずまいも好ましく繊細な倫理に貫かれており、峯澤自身が読者にとって抒情的であった。それは、彼女が規格的な世界を描いたり、規格的な倫理に従ったりするのではなく、あくまで世界や他者に対して個別的で臨床的なケースバイケースの反応をしているから可能になったのである。彼女の詩の美しさは、そのようなところから生まれてくるのだと思われる。

戻る   Point(3)