キャンディと王様・前章/にゃんしー
 

「ねえ水樹、キャッチャーでしょ。サイン出してよ、投げ方分からないからさ。
 誰のフォームで投げたらいいか」
 水樹は不安そうな顔で答える。
「お前この距離から、賽銭箱に入れられるんか? むっちゃ遠いぞ」
 乙彼は、笑って言った。
「あんたがサイン出してくれたら、大丈夫だって。
 ほら、私、あんたのサインに1回も首振ったことないじゃん。
 水樹もさ、私の球、1回も後ろに逸らしたことないじゃん。
 絶対、入れるって」
 水樹は、自信に溢れた乙彼の顔を見て、ようやく表情を緩めた。
 それから、賽銭箱を指差し、
「近鉄のときの岩隈久志!」
 と言った。
 乙彼は、
「マニ
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