『午前』へと続く午後/yamadahifumi
十月の午後は雨だった
それは全て雨に塗りつぶされていた
空は鼠色に塗りつぶされ、そして時々
燐光のようなものが宙を舞った
・・・その時、君は「あの時」の事を思い出していた
あの時、君は沈黙する事を知らなかったから
その饒舌で誰かを刺してしまったのだった
・・・今は八月の午後である
空は乾いていて
微風もある
だが、僕の心は雨に濡れて そして君は
墓場の下にも存在していなかった
そして、空はそれ自体一つの世界であるかのように
人間達が勝手に引いた国境線を嘲笑っていた
鳥達は自由に飛び そしてハンモックの上の少女が
お気に入りの漫画によだれを垂らしながら
気持ちよさそうに眠っていた
そうして、全ては『午前』へと変わった
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