TV boy/藤原絵理子
 
なにかに取りつかれたように
テレビの画面を見つめつづけて
何も伝わってこない低級な映像を
ハンストみたいな気持ちで眺める

罰を受けているのかも知れない
ふとそんな気にさせる巧妙な仕組み
懺悔するつもりなんかない
懺悔する内容さえも…ない

ささやかな休止
ノイズだけが見えて聞こえる
それでもさっきまでの番組よりは
まし

空が白んでくる
急速に奥行きを失くす街の風景
平板なやさしさを撒き散らす風景
一人前の凡人だと勘違いさせる

ヒゲを剃って
スーツを着込めば
街や人を騙せる
次に騙すのは自分

ぼくの孤独は
毎日毎日螺旋を描いて上昇する
夜になればまた意味のない映像が
閉塞した孤独を確認させようとする

抗うポーズを取りながら
結局確認作業に付き合ってしまう
そのほうがしあわせかも知れないと
言い訳してハンストをする

そして
すこしずつ
大切なものを
失っていく

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