夕日は/もっぷ
言葉が実らないまま葉を落とした樹を
じっと立ち尽くして眺めていた
夕日が心を刺すかのように沈んでゆく
会いたい
、出かかったため息すら失い気味に
ひたすらに泣いている自分に気がついていた
言葉をあらためようと決めて
父さん
と呼びかけたい衝動に鍵をした
もう骨だから
#
本当は白煙なんかみていないのに
ずいぶんいろんなところで嘘を
ついてきた
本当はあの時缶コーヒーを飲んでいた
泣いてもいなかった
もしかしたら笑っていた
白日の下で北西風がどんなふうに
わたしの長い髪をそよがせていたのか
コーヒーの甘ったるさとそのことだけを
覚えている
負け惜しみがわたしを守る
父さんの体が焼べられてしまう日までの
一週間の奪ったものが計り知れなくて
心が死んでいたんです
あなたは体が死んでいて
わたしは心が死んでいたんです
#
言葉が実らないまま葉を落とした樹は
わたしをじっと眺めている
(夕日は痛いかい?
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