音楽/葉leaf
大学生になってCDプレイヤーを買った。私が主に聞いたのはバッハやモーツァルトなどのクラシックだった。勉強に疲れた夜中、部屋を真っ暗にして目を閉じて音楽だけを聴いていると、まるで自分がどこでもない場所に浮遊しているかのように感じたものだった。あらゆる方角も高度も角度も無効である抽象的な空間に、私は身体から解き放たれて混じり合い、音楽の包括的で繊細で激しい空間的広がりに没入するのである。その後様々な音楽を聴いたが、中でもマーラーやヴォーン・ウィリアムズがお気に入りだった。音楽はその体系的な造りによってどんな哲学でも語ることができるように思えたし、その運動によってどんな物語でも紡ぐことができるようにも思
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