聖誕祭/織部桐二郎
ある聖夜ふと訪ひし教会に
聖誕のミサいかしくも
執り行へり鐘や鳴りつつ
我は信徒にあらねども
珍しければ連なりて
慣れぬ祈祷にしばし参じぬ
司祭は儀式進めたり
謝祷交はして会堂の
時説教に及ぶ折
森厳の気の溢れつつ
天国の業解かれたり
にはかに信ずるあたはねど
心に清き流れあり
ミサは更にもうち進み
主の祈祷誦されたりけり
鈴に膝つく一連に
聖体拝領信徒なす
我は司祭の祝福に
さやか心のうち締まる
司祭はイエズス会士たり
イスパニア老いし眼の
いと碧く慈悲に深かり
ラテンの声もいとやさし
乳香のなか神慮をたまふ
讚美の調べオルガンに
天の使ひもかくやある
ミサはいつしか果てたりき
讚歌奏でるオルガンに
送られ出づる天主堂
ひと夜浄らの冬なりき
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