春待ち/小原あき
 
ボールが転がる音がして
振り向いたら
それは冬が去っていく音なんでした

冬は寒いものを転がして
古くなったものを巻き取って
辺りをふかふかの風景にしていきます

それが春なんでした
春はお母さんの子宮みたいに
温かなんでした

お母さんって呼ぶと
赤く温かな気持ちになります
遠い遠い記憶が
春を待つわたしの中を
転がっていきます

小さな子どもが
ボールが転がっていくところを
走って追いかけていきます




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